誰も言わなかった薪ストーブの話

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朝まで暖かい?


「夜寝る前に薪をいっぱいにして空気を絞っておくと、朝まで熾き火が残
っていて暖かいんでしょう?」

 何度も何度も、聞かれる質問です。そのたびに「まるで薪ストーブ神話
のようだなあ」と感じてしまいます。
 確かに非常に魅力的な話です。朝、部屋はほんのり暖かく、薪ストーブ
自体も熱が残っている。熾き火をかき集めて、焚き付け用の小枝を少し乗せ、
空気を送り込んでやれば、薪ストーブは再び蘇るようにパチパチと燃えはじめる──。

 はっきり言いますと、この『離れ技』が可能なのは、触媒方式を採用しているメー
カー「バーモントキャスティング社」の比較的大型の薪ストーブだけです。
しかもよく乾いた広葉樹の太い薪を使って、という条件付きです。

 他のメーカーの薪ストーブのユーザーでも、こうした一夜炊きをしている、
という経験談を時折目にします。しかし一晩中理想的な燃え方をしているという保証はありませんし、
あまりお薦めしたくありません。
 ヨーロッパでは最近、小さい薪ストーブがよく売れているそうです。これはイ
ンテリアと暖房、つまり趣味と実益を兼ねているのですが、ヨーロッパでは薪
ストーブは『一夜炊きをしてはいけない』というのが常識です。小さな薪
ストーブに薪をいっぱいにして空気をしぼってしまうと、あっという間に炉
内が酸欠状態になり、タールがたくさん出てしまうからです。

 また同じくらいのサイズの薪ストーブでもメーカーが違うと特性が違います。
例えばヨツールの大型薪ストーブの場合、多少空気を多めに入れてあげることで、
非常によく燃え、暖房効率が上がるようになっています。このストーブで、
もし薪をいっぱいにしてしまうと、どんどん燃えて熱が上がり、場合によってはス
トーブの炉内の温度が危険な状態まで上昇してしまう可能性があります。
だからといって空気をしぼってしまうと、今度は小型ストーブ同様、不完全
燃焼してしまうでしょう。

 実際使ってみると、『朝まで熾き火が残っている』という使い方は、決して必
要条件ではないことがわかります。就寝前に最後の薪を『普通に』くべて、
自然に消えるように空気を調整して寝たとします。薪自体は2時間ほどで燃
え尽きてしまったとしても、ストーブ本体の蓄熱はもう数時間ほどかけて、
ゆっくりと冷めていくでしょう。朝起きたとき、熾き火は残っていないものの、
部屋自体はそれほど寒くなってはいないはずです。

 翌朝、着火には便利な着火材というものもあります。たとえ熾き火が無くでも、
苦労せず火をおこすことができるのです。

 実際に薪ストーブを使用している人に聞くと、夜もずっと付けている、
という人はあまりいないものです。中には「暑くて眠れなくなっちゃうよ」
という人もいます。こんな話にも、イメージと現実が微妙にズレているんだな、
と感じます。